東証、終日売買停止と決断した理由

システム障害により全銘柄の売買が終日停止となる事態を引き起こした東京証券取引所。当日中にシステム再起動して売買を再開する選択肢も有ったが、再起動を断念して、終日停止と苦渋な決断をせざる得ない金融市場だけに存在する壁がある。

システム再開の可能性

障害の原因は取引の基礎情報が保持されている「共有ディスク装置」1号機のメモリ故障であると明らかにした。故障した機器を交換し、システム全体を一度再起動させれば取引を再開できる可能性は十分あった。

金融市場だけに存在する特殊な壁

東証側のシステムを再起動した場合、各証券会社もシステムを再設定しなおさないと取引できない可能性がある。
2018年10月に起こったトラブルを例にすると、大量データ送信により回線の一部が使用不可となり、東証は別系統の回線に切り替えるように取引所へ接続する証券会社に伝えたが、90社のうち40社ほどが切り替えに手間取り、一時的に売買注文ができない状態になった。

リスクその1

A証券会社では注文が約定したが、B証券会社では注文が受け付けられなかったのようなことが発生すると、証券会社が顧客の損失を補填しなければならないことになる。

リスクその2

故障が発生した時、すでに各証券会社からの注文を受け付けている状態だった。システム再起動した場合、注文情報がなくなり、各証券会社は約定済み、注文済み、及び未注文のオーダー管理が一時的にできなく、混乱に陥る可能性がある。東証が証券会社の損失を補填しなければならないことに成りかねない。

システムを再起動すれば復帰できる可能性があるけど、人々のマネーが絡むと、こんなに慎重にならざる得ない。
「平等に取引できる環境を提供できない可能性があるのなら、取引させてない」の苦渋な決断。

「投資家や市場参加者に相当の混乱が生じることが想定されるため、終日売買停止を決めた」と横山隆介・最高情報責任者(CIO)は話す。

東京証券取引所の過去トラブル(メモ)

  • 1998年08月01日 システムダウンにより「立会場銘柄」を除く役9割の銘柄の売買を午前中停止。
  • 2005年11月01日 システム障害による初の全銘柄売買停止。株式、CBの売買が午前9時から午後1時半まで停止。
  • 2005年12月05日 みずほ証券のジェイコム株のご発注がシステム上の問題で取り消しできない状態となる。
  • 2006年01月18日 ライブドアショックによる注文殺到でシステム処理能力が限界に達すると判断し、午後2時間40分以降全銘柄が売買停止となる。
  • 2012年02年02日 システムを「アローヘッド」に刷新後、初の障害トラブル。241銘柄が午前中、売買停止となる。
  • 2018年10月09日 外資系証券会社の大量データ送信で一部回線が使えなくなる。別系統の回線切り替えに手間とった役40社の証券会社の注文が不能に堕ちる。

出典:日経ビジネス No2061

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